『ドミニオン:収穫祭』のカードの知られざる歴史
今回の記事は、BoardGameGeek のフォーラムから、The Secret History of the Cornucopia Cards というポストの翻訳です。カードゲーム『ドミニオン』の作者である Donald X. Vaccarino 本人が、拡張セット『収穫祭』のデザインの過程について語った内容です。
なお、この記事はシリーズとして、これまでに発売された各セットについて書かれています。基本セットの分である『ドミニオン』のカードの知られざる歴史と、『陰謀』の分である『ドミニオン:陰謀』のカードの知られざる歴史と、『海辺』の分である『ドミニオン:海辺』のカードの知られざる歴史と、『錬金術』の分である『ドミニオン:錬金術』のカードの知られざる歴史と、『繁栄』の分である『ドミニオン:繁栄』のカードの知られざる歴史と、プロモの分である『ドミニオン』のプロモの知られざる歴史は、当サイトでも翻訳して掲載済みです。
それでは、以下からが本文です。
『ドミニオン:収穫祭』のカードの知られざる歴史
『錬金術』は、もともとは20枚のカードからなるラージセットだった。〈秘薬〉を数えずにだ。基本セットを作ったとき、未来のセットから必要なカードを何枚か移動させてきたが、その中には『錬金術』の〈庭園〉〈図書館〉〈祝祭〉も含まれていた。さらに『錬金術』からは、他のセットにもカードが引きぬかれていった。すべてのセットを20枚から25枚にすることになったし、取り除いた使えないカードの穴埋めをする必要もあったからだ。ともあれ、結局は『錬金術』自体も作り直された。〈秘薬〉関係のものは残ることになり、残りの部分は「手札」というテーマで後のセットで使うことにした。プレイヤーの手札に関連するカードたちだ。このテーマは、修正するためにいったん保留されていたカードや、私が気に入っていた無害なカードのうちのいくつかにフィットしていた。
『繁栄』ができあがって、『海辺』の印刷が始まった頃、出版社がスモールセットを求めていることがわかり、ひとつ作って『繁栄』より先に出版する必要が出てきた。そうするための一番速い方法は、既にできているものを使うことだった。『錬金術』は、小さいセットにするのにちょうどいいサイズだったし、どちらにせよもう一度大きなセットに作り直そうとは思えないほどバラバラになっていたから、理想的だった。私は〈秘薬〉に関するものだけを使って、小さな拡張セットに調整した。そういうわけで、既に完成しているカードとテストもされていないアイデアがいくつか残り、『錬金術』の一年後に手札をテーマにしたスモールセットに生まれ変わるまで待つことになった。
『収穫祭』に取りかかり始めたとき、私は手札をテーマとしてそれにフィットするようなカードを追加し、既にあったものを磨きあげ、すべてがテーマに沿ったものにはできないから、テーマにフィットしないカードもいくつか追加することにした。それから、われわれはプレイテストを始めた。
わかったのは、「手札」というテーマが目に見えないということだった。テーマによってカードごとの繋がりはよくなったが、セットのテーマが何であるかということを誰も認識できなかった。単に、十分なほど明確なものになっていなかったんだ。
当時のセットには〈品評会〉と〈移動動物園〉が入っていて、そういった類のカードの数は少なかったものの、人々はそれがテーマなのだろうと誤解した。「多様性」というのはよいテーマに思えたから、私はそちらの方向へ進むことにした。手札を扱っているが多様性とは関係のないカードを取り除き、多様性を扱うカードを追加した。このテーマはちゃんと認識されたし、うまく動いた。
最終的に、ラージセットだった頃の『錬金術』から姿を変えて生き残ったカードは、〈道化師〉と〈王冠〉の2枚だけだ。他のカードのうちの一部は他のセットから来たもので、一部はこの『収穫祭』で生まれたものだ。
小さな拡張セットをほしがった出版社は、たぶん、基本セットと同じ金額を拡張セットに払いたがらないような人々も、小さな拡張セットであれば購入してくれると思ったのだろう。そういった人々がいるとすれば、彼らは大きな拡張セットを持っていないはずだ。『錬金術』は、唯一の拡張セットとして持つには理想的じゃない。風変わりすぎるからだ。出版社は、もっと風変わりでないものをほしかったんだろう。そのときは時間の制限のために『錬金術』以外の選択肢がなかったが、今回は豊富な時間があり、『収穫祭』は多くの拡張セットを持っていない人にふさわしいものを目指している。
カードの話に移ろう!
〈品評会〉
私はこのセットに勝利点カードを入れたいと考えていた。いつもそうしているからだ。私のアイデアのリストには、特に有望そうなものが二つあり、もう一方は手札というテーマにフィットするものだったが、実際にはうまく動かなかった。そういうわけでこちらを入れることにしたのだが、最終的にこのカードがセット全体のテーマを定義するものになるとは思っていなかった。最初のバージョンのコストは6コインで、デッキ内の名前の異なるカード3種類につき1勝利点というものだった。それからコストが5コインになった。いっときの間、6コインで、〈銅貨〉と〈屋敷〉を除くデッキ内の名前の異なるカード2種類につき1勝利点になった。最終的な計算式を提案してくれたのは John Vogel だ。完璧な計算式がどんなものかについては何度か議論があった(特に Tom Lehmann と Wei-Hwa Huang との間で)。しかし重要なのは、プレイヤーがすべての種類のカードを集めたいと思えるかどうかだ。
〈農村〉
私はこれより前に、アクションか財宝をドローさせてくれるが何もしない(+1アクションだけの)カードを、コストは2コインで別のセットで作っていた。よいカードだったが、結局は収録する場所がなかった。私はそれを〈村〉にして、このセットに移した。
〈占い師〉
最初のバージョンは、アクションを探して自分のデッキも掘るというものだった。強すぎた。名前に偽りもあった。また、もともとは〈呪い〉では止まらなかったが、〈占い師〉は当然〈呪い〉を受けることも予言できるべきだろう。
〈村落〉
手札をテーマにしていた頃のシンプルなカードで、変化せずに生き残った。
〈収穫〉
多様性をテーマとすることにしたとき、それを強調してくれるカードを作る必要があった。同じカードを引くまでドローさせるカードを試し、山札の上の5枚のうち同じでないカードをすべてドローさせるカードを試した。カードの代わりにコインを与えるようにすることでうまく動くようになった。
〈豊穣の角〉
ずっと前、『陰謀』に「このターンに使用したアクションカード1枚につき+1コイン」というカードがあった。コストは4コインだ。これはある種のプレイヤーには人気があった。だが多くのゲームにおいては無意味になったし(そのパズルを完成させるために大量のピースが必要だからだ)、いくつかのゲームでは太刀打ちできないほど強くなってしまった。+購入を持つアクションと一緒に使えば、大量のコインと購入権を得ることができる。擁護する者もいたが、私はこのカードを殺すことにした。あとでいつでも修正する機会は得られるのだから、『陰謀』に壊れているか無意味かのいずれかにしかならないようなカードを入れる理由はなかった。『陰謀』には、代わりにこのアイデアをヒントにした〈共謀者〉が入った。
私は後のセットで新たなバージョンを試してみた。「+2アクション。+1購入。これが場に出ている間、別のアクションを使うたび、+1コイン」。5コインだ。このアイデアは元のカードに不足していたものを加えたもので、より多くのゲームで使えるようになり、強すぎたゲームでも弱体化された。追加のアクションと購入権を得ることができる……だが、既に使用されたアクションは数えないし、これよりあとに使用されたものだけを数える。デッキを引き切ることができないときに、最後にこれを引き当てて快哉を叫ぶことができる。いずれにせよ、これも壊れていた。異なる名前のカードだけを数えるバージョンなども試してみたが、結局は見切りをつけた。
最終的な解決法は、〈工房〉のバリアントにすることだった。他の金と合算できないようにするんだ。そのかわり、購入権を使うこともない。十分強く、かつ振れ幅が大きすぎないようにするために、財宝も数えるようにする必要があった。最初は、購入フェイズになってから効果を発揮するアクションだった。しかし価値が0コインの財宝に変えることにした。単に価値が0コインの財宝があるということを喜ぶ人々もいるようだが、それについては何と言っていいのかわからない。このカードはアクションを使わず、他の財宝と一緒に動作してくれる。このバージョンは強すぎるときもあったので、「勝利点を獲得したときに廃棄する」という節を追加することになった。
財宝のバージョンは〈生産 Produce〉と呼んでいて、外国語版では失われてしまいそうなちょっとした言葉遊びだった。〈豊穣の角 Cornucopia〉というのがふさわしい名前に思えたので、別の『繁栄』のカードから取ってくることにした(それが今の〈玉璽〉だ)。それから、Jay がその名前をセット全体のタイトルに使いたがったので(それまでは『収穫祭 Harvest Festival』というタイトルだった)、もう一度名前を変えることになった。〈豊穣の角 Horn of Plenty〉というのは、〈豊穣の角 Cornucopia〉の同義語であるだけでなく、逐語訳だ。これでまた翻訳に問題を抱えることになった*1。
〈馬商人〉
もともとは『海辺』に、アタックされたときにカードをドローさせてくれるリアクションがあった。だが、リアクションを実行してもカードが手札に残るようにルールを変更したので、ひとつのアタックに対して無限にドローするのを防ぐにはややこしいテキストが必要になってしまい、取り除くことになった。しかし私は、いつかはそのカードを復活させようという大いなる計画を持っていた。
私はまずこのセットで、〈村〉の一種としてそれを試してみた。よりセットにフィットするように、コインを生んで手札を捨てさせるものにした。その後、セットのテーマを変更することになったが、そのカードはまだ気に入っていたので残すことにした。
3コインを生むようになる前は、手札にあるカード2枚につき1コインを生んでいて(手札を捨てはしない)、以前のテーマにはフィットしていた。だが、カードドローのコンボと一緒に使ったときには恐ろしすぎ、そうでなければ輝きがなかった。
このカードの効果が累積するようにするかどうか――1ラウンドで複数のアタックを使われたときに何度も働くようにするかについては、大きな議論があった。私にとっては、それは問題にもならなかった。もともとは累積させていた。誰かがアタックをランダムに買いまくるようなゲームでは、〈馬商人〉をもっともたくさん持っているプレイヤーが勝つ。累積させなくても、そういった大きなボーナスを得ることはできる。
〈狩猟団〉
このカードは、多様性をテーマにしようと決めたときに、後のセットから移してきた。最初のバージョンでは手札にないカードを2枚引かせるというものだったが、ランダムなカードを1枚引かせ、追加で手札にないカードを1枚引かせるように変わった。これによって処理が速くなるし、公正にもなる。
〈道化師〉
「他の各プレイヤーの山札の一番上のカードを廃棄する」というカードがいくつもあった頃まで立ち戻ろう。そういったカードは、1) 弱い(〈銅貨〉にばかりヒットする)、2) 振れ幅が大きすぎる(私の〈銅貨〉と別のプレイヤーの〈属州〉にヒットする)、3) すべてのプレイヤーの山札の枚数が5枚以下になってゲームが進まなくなってしまう可能性がある、という理由から取り除かれた。当時、『錬金術』には反対のカードがあった――「他の各プレイヤーは山札の一番上のカードを公開する。そのいずれかと同じカードを獲得する」。これもやはり弱くて振れ幅が大きすぎたので、同時に取り除かれた。
しかし私は、それを修正する計画を持ち続けてきた。そしてこの『収穫祭』でとりかかることにした。〈道化師〉は、カードを相手に配れるので〈銅貨〉に何度もヒットしても問題ないし、勝利点が出た場合には〈呪い〉を配るのでそれほど振れ幅が大きくもならない。もちろん、使用者自身は複数枚のカードを獲得できるから、振れ幅が大きくなることはある。〈道化師〉は5人プレイのゲームでは狂ったことになるだろうが、それは楽しいものにもなるはずだ。
〈移動動物園〉
このカードは『繁栄』から来た。最初のバージョンは、手札にある名前の異なるカード1種類につき1コインを生むというものだった。そういったバージョンをいくつか試してみたが、うまく働かせるためには閾値を設定する必要があることがわかった。最終的には印刷されたカードのようになったが、まだ+3カードではなく+2カードだった。それから、『繁栄』に入る安価なカードとしてはふさわしくないということで追い出されることになった。私はすぐに『収穫祭』に入れることにし、強化することで修正した。このカードは手札というテーマのためにこのセットに入れられたにも関わらず、多様性というテーマを生む助けになった。
〈再建〉
これはまったく変わっていない。わかりやすい〈改築〉のバリアントで、多様なカードを得る助けをしてくれるから、多様性というテーマにも見合うものになった。
〈馬上槍試合〉
ずっと前に、四つ目の拡張セットになるはずだったものを作っていたときのことだ。そのセットにはプレイヤーインタラクションというテーマがあり、他のプレイヤーが〈属州〉を購入しているかどうかを扱うというアイデアを思いついた。私はこのコンセプトで2枚のカードを作った。ひとつ目は〈交易路〉になって、プレイヤーインタラクションに関するカードを分配することに決めたときに、『繁栄』に移された(そういったカードはどのセットにも必要だったからだ)。二つ目はすぐに、4コインの「各プレイヤーは手札から〈属州〉を公開してもよい。あなたがそうした場合、+3カード。他の誰もそうしなかった場合、+3カード」というカードになった。つまり状況に応じて0枚か3枚か6枚のカードをドローするわけだ。私はそれを『錬金術』に移し、それからさらに『繁栄』に移した。『繁栄』で〈属州〉を公開するというのは特におもしろかったからだ。
そのカードにはある種の魅力があったが、つまらないと考える人々もいた。問題は、ほとんどの場合〈鍛冶屋〉にしかならないということだった。おもしろく感じられるほど〈鍛冶屋〉と違いがなかったんだ。そういうわけで、そのカードは『繁栄』を離れ、後にもう一度使う価値のある有望なアイデアのリンボ*2に送られた。
『収穫祭』を作り始めたとき、私はそのカードを、手札というテーマにフィットするかたちで作り直そうとした。カードドローの部分が退屈だったので、そこを取り替える必要があった。このとき試したバージョンは、コストが5コインで、「各プレイヤーは手札から〈属州〉を公開してもよい。あなたがそうした場合、財宝カードを1枚獲得する。他の誰もそうしなかった場合、アクションカードを1枚獲得する」だった。制限なくアクションカードを1枚獲得するというのは楽しかったが、うまく動かなかった。このカードと〈支配〉のあるゲームをプレイしてみたんだ。私は6枚の〈支配〉を獲得し、そして負けた。誰もが自分のデッキを勝利点カードでいっぱいにしたから、〈支配〉は〈工房〉にも劣った。もうひとつの狂った状況は、このカードを使ってこのカード自身と〈ゴーレム〉を獲得し、〈ゴーレム〉を使ってそれを繰り返すというものだ。大量のカードを獲得して、そのすべてを使い切ることができてしまう。そういったゲームも一度ならば楽しかったが、それだけだ。私はそのカードをもう一度殺すことにした。
そのしばらく後、私はこのセットを作っていて、追加のカードをゲームに加えることで多様性を増すことができるということに気づいた。デッキに多様なカードが入っているかを扱うものや、多様なカードを獲得することを助けるものはあったが、得ることのできる多様性の総量を増やすようなものはまだなかった。
最初に試したのは、〈闇市場〉のバリアントだった。〈闇市場〉はたくさんのカードを出してくれるから、この拡張セットで使えばクールになる。新しい〈闇市場〉を作らない理由があるだろうか? 私は、〈闇市場〉の問題点をすべて修復することにした。アクションフェイズにカードを購入する代わりに、直接獲得するようにした。〈闇市場〉デッキを作る代わりに、あらかじめ作られたデッキを用意することにした。それならそのデッキの内容は新しいカードにできるし、それもまた小さな拡張セットにとってはよいことだ。スペースの都合で5枚しか入らないとしても。
〈馬上槍試合〉の〈属州〉を公開するというメカニクスはこれにぴったりだった。だからそれを使うことになった。この〈闇市場〉のバリアントは、それによって獲得できるカードたちと一緒にサプライに出て、それらのカードは〈属州〉を公開することで直接獲得できる。だが、うまく動かすためにはまだ少し問題があった。
褒賞を得るためには〈属州〉を公開することが必要だから、序盤にそれが起こることはないし、手に入れた褒賞はデッキの一番上に置くから、ゲームが終わる前に使うことができる。さて、他のプレイヤーが〈属州〉を公開できなかった場合には、何を手にいれればいいだろう? 最初は〈銀貨〉だったが、明らかにだめだった。Steve Wampler が、カードをドローさせる効果を入れてみてはどうかと提案した。そうすれば、自分だけが〈属州〉を持っていたときに、褒賞を即座に手札に入れることができる。そういうわけで、〈行商〉――つまり「+1アクション。+1カード。+1コイン」にしてみた。しかしそれには問題があって、他のプレイヤーが〈属州〉を公開すると+1アクションを得られないことになり、他のカードを使えなくなってしまう。手札を眺めて、〈馬上槍試合〉を使うリスクを負うべきかどうか考えなくてはならないときがあるんだ。それは楽しくない。だから、いつでも+1アクションを得られるようにした。
もうひとつは、ブービー賞だ。もともとは〈銀貨〉だった。感動のないカードだが、それが〈公領〉に変わるまでは少しかかった。
もともとは公開した〈属州〉を捨札にはしなかったが、1ターンで何度も〈馬上槍試合〉に勝利できるのはやりすぎだった。今でももちろん可能ではあるが、難しくなった。
最後に、褒賞自体の話がある。褒賞は最初からずっと5枚だった。ちょうどそれだけのスペースしか空いていなかったし、いずれにせよいい数字だ。他のカードを取り除いて16枚の褒賞を入れられるようにしようとは思わなかった。褒賞はずっと0金だ。コストが必要なのは、コストを扱うカードがいくつかあるからだ。褒賞のコストをどうすべきかについては様々な議論があったが、私は0*コインとするのがよいと考えた。そうすれば、それらのカードを普通には購入できないことをより明確にできる。「これは褒賞を〈改築〉するのが正しいプレイだな」と考える機会がないというのも気に入っている。
褒賞は、褒賞にすることが「もったいない」ことにならないようなカードにしたかった。コストを決めるのが難しいとか、何枚もあると強すぎるとか、用途が狭すぎるとか、そういった普通には作れないようなカードにしたかった。〈王冠〉のための追加のアクションを常に得られるとは限らないが、そういうときには別の褒賞を選べばいい。すべての褒賞が使えなくなるようなことはない。
最初に作った褒賞はあまり興奮するようなものではなく、みんな不満を言ったし、私も作りかえることにした。〈金貨袋〉は、もともとは+1アクションがなかった。〈王女〉は、勝利点カードを安くするだけだった。〈名馬〉は+2カードと+2コインを与えるだけで、選択肢はなかった。〈王冠〉には変化はなく、見てのとおりだ。〈郎党〉のスペースには、「勝利点-アクション」の別のカードが入っていた。そのカードがうまく働かなかったのは、ご存知のとおり、終盤に勝利点カードを購入するのは勝利点のためだからだ。勝利点の褒賞を十分に興奮できるものにしようとすると、どうしても強すぎるものになってしまう。必ず自分が獲得できるとは限らないし、多くても1枚しか獲得できないから、デッキの中心になるようなカードにもできない。また、〈ハーレム〉や〈貴族〉のようなカードにすると、他の褒賞と並べたときに見劣りするものになってしまう。より強力な能力と引き換えにするものが2勝利点でしかないからだ。いずれにせよ最終的には〈郎党〉になった。
〈王冠〉は、もともとはずっと昔のラージセットだった頃の〈錬金術〉のカードだった。アクションカードで、「+2コイン。これを手札に戻す」だ。〈村〉と一緒に使うことでよいコンボになったが、そうでなければ使い道がなかった。それから「次のうちのひとつを選ぶ」バージョンを試した。それは無駄なカードになることがあるという問題は解決できたが、アクションを金に変えるという部分はよくならなかった。結局それは諦めて、最終的にはこのとおりになった。
〈郎党〉は、『繁栄』の〈ならず者〉を作っている間に生まれた。「次のうちのひとつを選ぶ」カードをいくつも作って試し、その中で、二つの攻撃を同時に行ってその反対の利益を得るというものができた。コストが6金で、〈屋敷〉ではなく勝利点トークンを与えていたこと以外は今と同じだ。そのバージョンは強すぎた。〈屋敷〉は明らかに勝利点トークンよりもずっと弱いし、褒賞であることで頻繁に使われたり序盤で使われたりすることがなくなっている。
ある時点で、〈名馬〉で+2アクションを得たときに+2購入も得られるようになり、〈王女〉で+1アクションを得られるようになった。
〈魔女娘〉
〈闇市場〉を作ることを決めたときに、サプライに山を追加するカードも作ろうと決めた。また、ランダムに選ばれたある山のカードが〈堀〉の代わりになるようなアタックも作りたいと考えていて、もっとも簡単なやりかたは、その二つを組み合わせることだった。最初は、追加の山はコストが必ず3コインでなければならなかった。少ないセットでプレイするときに多様性を持たせるため、2コインでもよいことにした。この変更は jeffwolfe の提案だ。最初は、〈魔女娘〉は「成長」していた――空になった山があると強くなっていたんだ。それは魅力的だったし、なくなったことで悲しむ者もいたが、そのバージョンは十分によいものではなかったし、どのカードにもテキストのスペースは同じだけしかない。彼女はずっと若いままだ。カードドローは成熟した〈魔女〉ほど達者ではないし、怖いものもあるんだ――〈地下貯蔵庫〉だったり、〈移動動物園〉だったりね。*ブルブル*
どれが災いカードの山なのかを示す方法に関しては少し議論があった――マットのようなものが必要かどうかだ。Jay が、ランダマイザカードを横に向けて使うことを提案してくれた。
その他の没カード
- しばらくの間セット内で際立っていたカードは、5コインで「手札が5枚になるまで〈銀貨〉を獲得して手札に加える」というものだった。テキストの記法は正確ではないが。われわれはそのカードが取り除かれるまでテキストの記法に関する議論を重ねたが、それは時間を無駄にしないための教訓になった。いずれにしたって、このカードはエキサイティングだろう? しかし、手札を簡単に捨てられないようなゲームでは、このカードは〈探検家〉の劣化版になってしまった。最初は人々を幻惑したが、もはや取り除いたとしても誰も悲しみそうにはなかった。ごくまれには用途の狭いカードを作ることもあるが、それはうまく使えたときにクールなものにならなければならない。このカードは十分じゃなかった。
- 〈品評会〉の前に、私は代替コストを持つ勝利点カードを試していた。コストを支払う代わりに、手札からアクションを2枚廃棄してもよいというものだ。誰もアクションを廃棄したいとは思わないから、これはあまりおもしろいものにならなかった。
- 多様性に関わる〈村〉と〈倉庫〉のかけあわせもあった。「+2アクション。場に出している名前の異なるカード1種類につき+1カード。その後、それと同じ数のカードを捨札にする」。これはよいものだろうか? エキサイティングではなかったし、他のものと十分異なってもいなかった。
- 手札がすべて名前の異なるカードでない限り、カードを1枚手札から山札の上に置かせるというアタックを試した。その〈堀〉の条件はよかったが、うまく動かなかった。
- 〈魔女娘〉の前に、特定のカードを公開しない限り〈銀貨〉を捨札にさせるというアタックがあった。その特定のカードとしては、一番コストが安いカードと、ランダムに決定された特定のカードというのを試した。〈魔女娘〉のところで言ったように、ランダムに選ばれる〈堀〉のアイデアとサプライに山を加えるというアイデアを組み合わせるのが一番シンプルだった。
- +2コインで、タイプを宣言し、山札を掘ってそれを探し、山札の一番上に置くというカードがあった。コストは3コインだった。ほとんどの場合、自分のデッキに入っていないタイプを宣言することもできたから、〈宰相〉の「完全な上位版」だった。一部の人々はこのことをよく思わなかった(Anthony Rubbo もその一人だ)。何らかのかたちで弱体化させなければならなかったし、そうしたくはなかった。
- 別のカードを使用させ、その中のすべての「+」を好きなものに置換するというカードがあった*3。ルールの問題があるだけでなく、弱かったし用途も狭かった。
- ターンの終了時まで、カードの選択肢を広げてくれるカードがあった。「+1カード。+1アクション。これが場に出ている間、カードをドローするとき、山札の一番上のカードを見て、それを捨札にしてもよい」。最初は遅いカードだが、すぐに狂った強さになってしまう。
- 他のプレイヤーの手札にどのくらい多様性があるかに応じてカードをドローさせる、というペナルティを持ったカードを作ろうとしていた。
- うまく動かなかった褒賞があった。「+2アクション。+2コイン。このカードを場から捨札にするとき、これを山札の一番上に置いてもよい」。狂っていた。
- 獲得したカードを手札に入れるバージョンの〈改築〉と〈工房〉をつくろうとしていた。〈改築〉の方は単純に壊れていた。〈工房〉の方は有望そうに見えていたが、見てのとおり今は没カードの区分に入っている。
- 『繁栄』であまりに強力すぎたカードの別のバージョンを5つ作った。どれもうまく動かなかったが、まだ諦めることはないと思っている。
- 〈薬草商〉は短い間このセットに入っていた。
- 入れられるカードの余裕は13枚分しかなかった。人気のあるカードがひとつあったが、後のセットに入れたほうがよりよくなるだろうと考えたためそちらに移動させた。あるアタックはまったく機能しなかったのでいったん取り除いて修復したが、戻す機会がなかった。それも今は後のセットに入っている。『陰謀』で生まれたカードがもう一枚あったが、『錬金術』に移り、ここで何度もプレイテストされたため強すぎることがわかり、取り除かれ、今は修復されて後のセットに入っている。
本当の話だ!
*1: 日本語版では、セット名が『収穫祭』となり、カード名が『豊穣の角』となりました。
*2: 「辺獄」。ここでは、利用するアイデアと廃棄するアイデアの中間の意。
*3: たとえば「+1コイン」を「+1カード」に置換できる。